トライアスロンにヒントを得て、日本で誕生した「ゴルフトライアスロン」ってご存じですか? スイム、バイク、ランのトライアスロンに対し、ゴルフ、バイク、ランをすべてゴルフ場で完結する競技で、ゴルフにバイクとランのトレイル要素を足したスポーツです。その魅力を、一般社団法人ゴルフトライアスロン協会代表の松尾俊介さんに聞きました。

バイク、ランでもコースを楽しむゴルフ版トライアスロン

 スイム、バイク、ランの3種目を連続して行うトライアスロンは、五輪の競技にも採用される人気スポーツ。オリンピックディスタンスと呼ばれる、スイム1.5km、バイク40km、ラン10kmの合計51.5kmのレースでは、トップ選手でもフィニッシュタイムが2時間弱と、いかに過酷かが分かります。

 そんなトライアスロンにヒントを得て誕生したのが「ゴルフトライアスロン」です。2019年に日本でスタートした競技で、ゴルフ、バイク、ランの順で競技を行い、順位を争います。一般社団法人ゴルフトライアスロン協会代表で、この競技の発起人である松尾さんにお話を聞きました。

ゴルフ、バイク、ランを終えてゴールした時はさぞかし大きな達成感に満たされていることでしょう 写真:一般社団法人ゴルフトライアスロン協会提供
ゴルフ、バイク、ランを終えてゴールした時はさぞかし大きな達成感に満たされていることでしょう 写真:一般社団法人ゴルフトライアスロン協会提供

「ゴルフ界を盛り上げたいと考えていた時に、欧米の選手がプレー後に走っていることが思い浮かんだんです。それで、ゴルフとランニング、バイクも付けたら面白いんじゃないか、競技を通して強いゴルファーが現れるんじゃないかと思ったのがはじまりです」と、当時を振り返ってくれました。

 競技は18ホールのセルフプレーで始まります。もちろん、乗用カートなどは使わず、自分のバッグは担ぐか手引きカートでのプレーとなります。そして、1ストローク15秒の差をつけてバイクがスタート、最後がランニングとなります。

 ゴルフからバイクへのトランジションは計測外ですが、バイクからランへのトランジションはトライアスロンと同じく計測の対象となります。距離はバイクが36ホール、ランが18ホールのAクラスと、バイク18ホールとラン9ホールのBクラスが設定されていて、自身の体力に応じて参加することができます。

 競技の魅力の一つが、バイクとランのコースが実際のゴルフコースを使用する点です。

「コースを走る、コースで自転車に乗るという体験は、なかなかできるものではありません。アップダウンがあって、とてもタフなコースですが、そのぶん『味わったことのない達成感が得られる』と言われる方が多いです」(松尾さん)

 ランやバイクでは、カート道の走行が基本となりますが、開催コースによって数ホール芝の上がルートに設定され、それがここでしかできない体験となり、参加者に好評を得ています。

 どんな人が参加しているのか気になるところですが、現在のところアスリート寄りなゴルファーが多く、ゴルフがうまいとアドバンテージが大きくなるとか。100を切れる力があって、自転車は1時間で20キロ、ランニングは10キロを1時間以内で走れると、上位進出の可能性は十分にあるそうです。

 スコアのリードを保つことができるか、ゴルフで出遅れてもバイクとランで挽回するか、自分の限界に挑戦できるのも競技の魅力となっているようです。

今年は6月の北海道、10月の静岡と2大会を予定

 2023年は、6月3日(土)に北海道の岩見沢パブリック 雉ヶ森ゴルフコース、10月20日(金)に静岡県の伊豆ハイツゴルフ倶楽部での開催が予定されています。競技としての発展はもちろんですが、他にも相乗効果を生み出したいと松尾さんは話します。

「ゴルフ場の新たな可能性と大会をきっかけとした地域の活性化です。ゴルフ場はプレー以外での集客の可能性がありますし、参加者が増え大会の規模が大きくなれば微力ながら地域振興にもつながると思っています」

 まだまだ黎明期といえるゴルフトライアスロン。日常では味わえない何かを求めて、チャレンジしてみるのもよさそうです。

兵藤宙